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ざる蕎麦とかけ蕎麦

千葉出身というのは、自分の中ではずっと「特別でも何でもない、ごく普通のこと」だと思って生きてきた。けれど、どうやらそうでもないらしい。

千葉で18年、埼玉で3年、東京で10年、そして長野で3年。いくつかの土地を移りながら暮らしてきて、自分の好みや感覚にははっきりとした軸があることに気づいた。その一つが、醤油の味だ。

とにかく醤油が好きというのがわかってきた。

東京にいた頃は立ち食いそばにかなりハマっていた。忙しい合間にさっと食べられる気軽さもあるが、それ以上に、かけそばの汁の味がとても好きだった。醤油と出汁の効いた温かい汁がそばに絡み、そこに揚げ物の油が少し溶ける。その味のまとまりが心地よかった。

ところが長野に来てから、立ち食いそばをほとんど食べなくなった。

長野のそばは確かに美味しい。ざるそばの文化が強く、麺のコシや蕎麦そのものの風味をしっかり味わう店が多い。ただ、つゆは主役ではなく、あくまで脇役という印象がある。店の数も、人口比率では多いと言われるが、東京のように気軽に入れる場所は少ないように感じる。

東京のそばは汁の美味しさを楽しむもの。長野のそばは麺の風味を楽しむもの。同じそばでも、考え方がまるで違う。

暮らしてみて思うのは、長野は「水と味噌と小麦粉の街」だということだ。
醤油や出汁に関しては、どうしても千葉や東京の味と比べてしまうが、長野には別の強みがある。

長野は水が美味しい。水道水でもハッキリとわかる水の美味しさ。そして小麦粉の購入量が全国1位らしい。パンやおやきが美味しいのも納得だし、粉ものへのこだわりが強い土地なのだろう。また、味噌の生産量も多く、日本の半分以上を占めるという話もある。

そして長野の味噌汁は、味噌そのものを主張させるというより、野菜やきのこから取った出汁を味噌で「整える」。ここがとても重要だと思っている。味噌が主役ではなく、全体の調和をつくる役割を果たしている。そういう汁物の美味しさは、ここでの暮らしの中で強く印象に残っている。

改めてそばの話に戻る。

長野は、冷たいざるそばでコシと香りを楽しみ、豪華な天ぷらを添える文化。
東京は、温かいかけそばで醤油と出汁をたっぷり絡ませ、揚げ物の油が溶けた汁まで味わう文化。

どちらも美味しい。けれど、自分にはやはり醤油の国のおひざもと、千葉の食文化の中で育った感覚があるのだろう。醤油の味をしっかり楽しめるかけそばの方が、どうにも性に合っている。
餅を食べるなら醤油と海苔で巻いた磯辺餅が当たり前だと思ってきたが、どうにも違うらしい。

そんなことを考えていたら、無性にかけそばが食べたくなってきた。

(それと、長野ではなく信州と言ったほうが自然な気持ちは強いが、別の都道府県を出した便宜上で長野と表現しております。)

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